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BOOK REVIEW 吉本ばなな アムリタ

野村秀樹さんによるレビュー

僕は幸せに対して無感動過ぎるんじゃないだろうか。と、まだ二十歳にもならない若造が頭を悩ませたのは、一冊の本に出てくる人達に感化されてのこと。

大切にしたいと思う本があるとき、意識や無意識に本の影響が言葉遣いや仕草、考え方に現れてくる。登場人物を真似たり、作中の文章が妙に頭に残って気づいたらそれの事ばかり考えていたり。特に僕なんかは読んだ本に影響されやすいので、頭の切り替えがうまく出来ないままずっと本の中に閉じこもっていたりすることも多々ある。

「アムリタ」も僕がどっぷりとはまり込んだ本の一つだ。この本をきっかけに僕は吉本ばななの作品を読むようになった。

どんな話かと言えば、記憶喪失の主人公と家族を中心とした日常を描いたストーリーだ。電波を受信してしまった弟だとか、放浪作家の彼氏だとか、彼氏の元彼女が死んだ妹だとか、いろいろと問題の火種がくすぶっているのだけれど、それでもなんとなく楽しげに暮らしていく。いつでもなにかが幸福。

バイト先で音楽を聴いていても、旅行に行っても、何か事件があっても、

「生きていて幸せ」

そんな言葉がどの文章からもにじみ出てくるような作品だ。

主人公の母親が、弟にいろんな質問を投げかけるシーンがある。 自分の言葉でうまく説明する自信がないので、質問だけ抜粋してしまうが。

  • 食べ物おいしい?食べ物の味を、ちゃんと感じてる?
  • 朝起きると楽しい?一日が楽しみ?夜寝るとき、気持いい?
  • 友達が前から歩いてきます。楽しみ?面倒?
  • 目に映る景色がちゃんと心に入ってきますか?音楽は?
  • 外国のことを考えてみて。行きたい?わくわくする?それとも面倒?
  • 明日は楽しみですか?三日後は?未来は?わくわくする?憂鬱?
  • 今は?今をうまくやってる?自分のこと気に入ってる?

別に聞いてどうすると言うわけじゃなく、そもそも自問自答するためのもので、人生の秘訣という風に言っている。

僕はこのシーンがとても印象的だった。

そのあとの彼氏が主人公達家族を「幸福に対して貪欲」という言葉を見て、なんというか、自分が幸せになろうとしているのか?どうなんだ?という風に思いつめてしまった。

自分自身が幸せになろうとする努力とか、幸せに対するアンテナだとか、意識して考えたことなどなかった。漠然としたものは、言葉という形にすると鋭さが増す。

「幸福に貪欲」であることとはぐれてしまっていた。多少小さい頃は持っていたはずなのに。

レビュアー: 野村 秀樹

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